目覚めれば川のほとり

葉山でゆったりまったりライフ

リリィ

葉山はおとといの朝台風が通り過ぎ、空と空気がいちだんと澄んだ気がしています。

いよいよおふとんを出しました。夏場はタオルケットでしたけど、もうむりや。さむい。

さむいといいながら、窓はまだすこし開けて寝ています。

先日まで蝉が鳴くのを明け方夢うつつに聴いていましたが、それも終りました。

蝉の声はまだ聴きますが昼近くなってから。最期の力をふりしぼるように鳴いています。

朝はもう静か。いま、開け放した窓のそとからは、鳶の鳴き声と秋の虫が奏でる音色が広がっています。

もう9月も4日なんですね。前回の更新からすこし日が開いてしまいました。

おはようございます、リョウコです。

 

日も開いたことだし明るい話題を、とも思いましたが、9月に入ったら語りたいお話がひとつありまして。

 

10年まえの9月、飼っていた猫が亡くなりました。

14年くらい生きてくれて、最期は老衰でした。

 

猫は気まぐれとよく云いますけど、あの子はちがったかなあ。

わたしが呼ぶと、どこにいてもなにをしていても、にゃあ~と鳴きながら飛んできてくれました。

だいたいそとから帰ると玄関さきにいて待っていてくれたし、わたしが歌うといっしょに歌ってくれた。

言葉は通じなかったけど、よく話もしましたよ。お互いにゃあにゃあいってるだけなんだけど。

名を呼べば返事をする。にゃあといえばにゃあと返してくれる。犬みたい、って母はいってた。

彼女がなにを思って、感じていたかはわからないけど、たいせつな家族でした。

うれしいことがあったときも、くるしくてしかたなかったときも、いつもそばにいてくれました。

 

10年まえ、春ごろから、あまり動かなくなりました。

彼女はいつも窓際にいました。

飼っていた14年のあいだ、引越しをいちどしましたが、じつはどちらの家も動物が飼えないマンションでした。ないしょで飼ってましたが、周囲には知られてたんじゃないかなあと思う。

みんな見て見ぬふりをしてくれた。周りのひとたちもあったかかったですね。

でもおおやけにはもちろんできないから、あまりそとにも出してあげられず。

だからか、窓のそばにいることが多かった。晩年、弱り始めてからはずっとそうでした。

足があまり動かなくなって身体も重そうで、ぺたんと床に伏せていた。いつも、窓際で。

 

9月。ついにそのときが来ました。真夜中でした。

ずっと伏せていた彼女が、急にばたばたばたっと動き出し、慌てて呼びかけるわたしたちの声を聴いてくれたかどうか、みんなの手のなかで、息を引取りました。

動かない彼女のそばで、わたしたちもしばらく動けず、ひたすら涙を流しました。

死んでしまった。失った、というたしかな喪失感がありました。

 

亡骸のそばから動かないわたしと妹に、しばらくして、母がいいました。

「あんたたち、知ってる?」

涙でぐしゃぐしゃの顔で、わたしも妹も怪訝そうに母を見上げました。

彼女がいつもいた窓のそと、ベランダに出て手招きするので、のろのろと立ち上がる。そばに行くと

「見てごらん」

 

当時住んでいたマンションのその部屋は、1階のはしっこで、ベランダのすぐそばに小さな建物がありました。母は「電気室」といっていました。9階建のマンションの電気系統が収まっている箱のような建物でした。箱はうちのベランダに迫るように建っていて、あいだに柵があり、それはベランダから手を伸ばせば届く距離でした。

ベランダと柵のあいだの20~30センチのスペース。母に呼ばれて見たそこに

 

白い百合の花が咲いていました。

 

そんなところに花が咲いているのを見たのは、十数年暮したなかでもそのときだけです。

母がいうには、春ごろからなにかが伸び始めているのを見つけ、花が咲いて、百合だと判ったそうです。

ほんとうに狭い、なにもない場所です。どこから、どんな事情で飛んできたのか。

花が咲いたのは、可愛いあの子が亡くなる直前でした。

 

花は5つ。

父と母と、妹とわたし、そして彼女の、家族の人数分に思えました。

 

 

 

彼女の名前はリリィ。

 

ペルシャのチンチラで、白く長い毛の、そのさきがグレーがかった、とても綺麗な猫でした。

 

あのあといろんなことが重なって、その年のうちに引越しをし、東京から神奈川に移り住みました。

白い百合は、掘って連れていきました。翌年の夏、もういちどだけ花を咲かせてくれました。

翌年には妹が結婚して姪が生まれ、その顔を見てすぐ患っていた父が亡くなり、また引越して、母といまの場所へ。

ここ、葉山はほんとうにいいところで、母もわたしも気に入りすっかり落着いています。

 

リリィの写真を部屋に飾ってるんですけど、よく声をかけます。

おはようとか、ただいまとか。今日は暑いね。涼しくなったね。そとは月が綺麗だよ。とか。

たまに、まえみたいに抱きたくなって、写真の彼女の頭のあたりを指先で撫でたりします。

 

そんなわたしを、リリィはどう思ってるかしら。

あのころもわからなかった彼女のきもちを、いつか聴いてみたいと思うんです。

 

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